今日は阪神の試合もあっさり終わってしまったので(苦笑)、今まで忙しく時間がなく見ることの出来なかったDVDをようやく観ることが出来た。それは何かというと「バッテリー」
。原作は、1000万部を突破したあさのあつこによる同名のベストセラーになった児童文学。児童文学ながら大人をも魅了する不思議な力を持つ小説といえる。この小説との出会いは忘れられないものがある。
イギリス留学中に実は親に内緒で1度だけ東京に帰ってきたことがあった。それは、ドクターの学位(博士号)を取る最終段階審査で一部分の書き直し、という審査結果であったがゆえに急に不安になったから(苦笑)。日本だと「○○博士課程満期退学」という訳のわからん制度?!のようなものがあってそれを堂々と履歴に書いたりするのだが(要は博士号を取れなかったということを証明する以外の何物でもないのだが。。。)、留学の場合、そんなものはもちろんなく、学位が取れなければ単なる留学崩れに終わってしまうのだ。今思えば、一部分の書き直しによる再審査というのは何ら珍しいことではなくイギリスでは普通のことだったのだが、そのときはもうドクター取得は無理なのでは、ということしか頭に浮かばず不安で不安でしょうがなかった。その時はともかく一度日本へ、という思いしか浮かんでこなかったのだ。かといって実家に戻れば不安に思われるだけ、ということでともかく東京に2日間だけ帰ることにして親友Kとのみ会うことにした。その際、Kから手渡されたものが角川文庫の『バッテリー』だった。Kにイギリスであったことを具体的に話したわけではない。しかし、彼は長年の付き合いからなのか、私の雰囲気から何かを感じ取ってくれていたのであろう。「とりあえずイギリスに戻ったら読んでみろよ!」とだけ言い残し別れ際に手渡してくれたのだ。
イギリスに戻るにはまた12時間という長い飛行時間がある。もちろんイギリスに着くまで待てるはずもなく、戻る機内の中で一気に読んでみた。簡単に内容をまとめてみると、もうすぐ中学生になる天才ピッチャー、原田巧。彼の球は速すぎて捕手も捕球出来ず、野球部でも孤立。また、母親は病弱な弟・青波(せいは)を彼より優先し、家族の中でも孤立しがちだったが、中学入学目前の春休み、一家は弟の健康のため岡山県に引っ越し、巧は自分の球を受けることができる捕手・豪に出会う。しかし野球部に入学した巧を待ち受けていたのは、監督による徹底した管理野球と、彼の才能に嫉妬する先輩たちによるイジメ。それでも巧はそれらに屈せず自分を貫くこうとする。そして、野球部の存続をかけた他校との対抗試合の日がやってくる。。。というようなもの。
機内にも関わらず、読みながら涙が止まらなかった。野球って本当になんて素晴らしいスポーツなのだろう、ということに感動したのももちろんなのだが、「いましか出来ないことがある」ということを巧と豪という二人によるバッテリーの技術と心の成長を通して読者に強く訴えていたからだ。家族の絆、友人の大切さ、そしてその中で自分の存在を実感し、一歩一歩成長していく様子の描写が見事だった。読み終えた後、そうか、Kが自分に伝えたかったことはこのことなのか、ということを理解することができ、何とか自分も現実から逃げ出すことなくそれから9ヵ月後の最終再審査で無事にドクターを取得することが出来た次第。
そうした経緯がある小説が原作の映画なだけに本当は3月に公開されたときに映画館にぶっ飛んでいきたかったのだが、仕事がどうにも忙しくその余裕を持つことが出来なかったのだ。そしてDVDの発売初日に購入していたにも関わらず今日まで観る機会を持つことが出来ないでいたのだが、今特典映像を含め見終え、まずは配役が見事だなぁと感じた。巧&豪を演じる二人もまるで小説から抜け出してきたかのようだし、その脇役をベテラン勢が見事なまでに埋めている。特に天海祐希、菅原文太の演技には涙々。。。それに舞台となっている岡山の美しい町並みが映画をより一層奥深いものにしている感じがする。静かな優しさがずっと根底に流れているような映画と言える。小説と同様にこのDVDも是非とも1度観て頂きたいものだ。
ちなみに親友Kの名は私のドクター論文の「Acknowledgments」のなかにしっかりと認められている。
最近のコメント